玉川上水

近現代戦記小説のブログです。

Category :  小説
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「飛びます」第三回分を掲載しました。
http://shizuoka.cool.ne.jp/suruga_s/novel/tobimasu/1_3.htm

 この回で楓姉さんが登場。凛と楓の二人芝居ですが、
 凛は酷い目に遭ってばかりです。


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「飛びます」第二回分をアップしました。
http://shizuoka.cool.ne.jp/suruga_s/novel/tobimasu/1_2.htm


 ところで今は10月30日の25時55分なので、これは誰が考えても締め切りには間に合った、ということで宜しいですよね!
Category :  小説
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 書いてある分だけ、随時掲載していきます。
 今回は初回なので、オープニングからお送りいたします。

 http://shizuoka.cool.ne.jp/suruga_s/novel/tobimasu/



Category :  小説
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 予告

 ――未来。歴史はくり返す。
「こちらエンタープライズ。情勢に変化は?」
『エリス、注意して聞け。日本政府は、今日零時を持って、米国との外交交渉を打ち切った』
「なんですって。それは、事実なの?」
『残念だが、事実だ。日本は近々、武力を発動するだろう』

 AD.2045――"SUMMER"×100

『国家に真の友人は無い。彼らは変わった、この百年の間にな』
「それは米国も、でしょ」
『エンタープライズ、それを言ってくれるな』


 隔てるのは百年の時。「瑞鶴」・「エンタープライズ」、今再び相会す。
「遅刻遅刻――わぁ、そこの人、どいてッ!」
「えっ」


 師範校演劇部と生徒会――物語を彩る、強烈なる娘たち。
「ほらなぁ筑後、やっぱし、あんたのシャミ(三味線)が不味かったのやで」
「瑞鳳の踊りでしょ?」
「そういう問題じゃないッ、と言っているんですよ、さっきから!!」


 開戦今や旦夕に迫る帝国に、暗躍する国際スパイ団の影。
「方向探知によると敵のアジトは、この地図上、円形の地域のどこかであることは明らかなんだが」
「有馬。時局は動いているぞ。そんな悠長なことで許されると思うのか」


 勇壮なるヒストリカル学園アクション。そして物語は、最後の決闘へ。 




2009年夏季・特別制作長編

「飛 び ま す」
Tobi-masu

10月23日・連載開始
(毎週金曜夜更新)





「あなたを、待っていましたよ」


 ――ご期待下さい。


Category :  読み切り小説
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 海上自衛隊の空母「なぐもちゅういち」は、ソマリア沖で旧日本海軍・伊号潜水艦を見つけ、てんやわんやの大騒ぎとなった。
 伊号は昭和二〇年の出撃以来、終戦を知らず、今日までひたすら作戦を続けていたのである。乗員は、みな九〇歳を超えていた。


「敵の哨戒機に発見される恐れがありますから、昼間は潜航をし、充電は専ら夜に行いました」
 今年百五歳になる伊号艦長の老少佐は、綽々とした調子で、これまでの一切の経緯を説明した。空母「なぐもちゅういち」に座乗の海将補は、その説明を聞きながら、俺の親父よりも遥かに元気そうだ、と思っていた。

「うむ……。で、では、糧秣・燃料等は、どうしていたのか?」
 海将補は努めて平静を装いつつ、自分の年齢を二つ合わせたくらい年上の少佐に、訊ねた。

「は。出撃に当たり、軍令部総長から、原住民宣撫用の現金を頂きましたので」
 少佐は紙幣を取り出して海将補の机に置き、
「沿岸の住民と交渉し、確保致しました」
 やはり、見たこともない紙幣だった。

 伊号の乗員は空母に収容され、大宴会が始まった。伊号を曳航する「なぐもちゅういち」に酒は無かったが、老人たちは自衛官が隠し持っていた酒を、どこからか見つけて来て、全て飲んでしまった。大戦中の潜水艦の歌・「轟沈」や、「可愛いスーチャン」などを歌う声が、艦橋にも聞こえて来る。

「艦長、これからどうするんですか。あの年寄りたちを」
「うーむ。航海長、困ったことになったな」
「実に実に、困ったことです」
「医務長が、戦争のことは知らせてはいかん、と言っておった」
「どうしてですか」
「みんな、九〇を越えてる爺さんだ。日本が負けた……などと聞いたら、一体、どうなるか」
「全員、お迎えが来ますかね」
「本艦を乗っ取りかねんよ。ううん」


 連日連夜の宴会のさなかに、艦内放送が入った。
『総員聞け。艦長よりお言葉がある』
「おい、天の声だぜ」
 伊号乗員たちは盃を置き、耳を澄ませた。老少佐もするめいかを齧りながら、スピーカーを見上げる。

『艦長だ。本艦はこれより東京湾へ向かう。途中寄港はしないので、伊号の乗員も同行する。終り』
 ざわめきが起こった。
「おい、東京湾だとよ。内地だよ」
「じゃぁ、任務はどうなったんだ」
「静かにしろ。騒ぐな」
 そこへ、空母の航海長が現れ、声を張り上げて、彼らに言った。
「諸君らが知らんのも無理はないが、すでに米国は無条件降伏をし、大東亜戦争は我が国の勝利に終わったのだ。帝国は今、東亜の盟主としてますます栄えておる。わかったなァ」

「おお」
「終わったのか、戦争が」
「日本が勝ったのか」
「そうかぁ」
「万歳!!」
 またもや、ドンチャン騒ぎが再開した。

「艦長、伝え終わりました」
「ご苦労だった、航海長。どうだった、みんな大喜びだったろう」
「それはもう、九〇の年寄りが、まるで子供のようで」
「何やら、胸が痛むようだな。いずれ、ばれてしまうことだが」
「しかし、もはや戦争のことなど、誰も覚えていません」
「まぁ、な。ところで、航海長、東京湾にはいつ到着する」
「七日後には東京湾です」


 航海長の言う通り、空母「なぐもちゅういち」は、きっかり七日後、太平洋から東京湾へと達した。
 浦賀水道を通る時、飛行甲板にはもう、帝国海軍の水兵服を着た伊号の乗員たちが、鈴なりになっている。
「見ろ。松の木だ」
「良かったな。内地は変わっていないのだな」
「お前はそんなに皺くちゃだがなぁ」

 次に伊号の乗員たちは、艦の正面から、星条旗を掲げたアメリカ海軍の駆逐艦がやって来るのを目撃した。
「おい、アメ公だ」
 みな緊張したが、米駆逐艦は針路を変え、こちらへ敬礼したので
「やはり、戦争は終わったんだな」
「日本の艦のほうが偉いのだ」
 と思った。(本当のところは、海自空母に海将補の旗が揚がっていたからに過ぎない)

 空母は横須賀に到着し、老人たちはそこから小型艇に乗って出発することとなった。
「これより東京に上陸する。帝国海軍軍人として、地方人に迷惑をかけてはいかん。諸君らは特殊な環境下に居たのであるから、暫くのあいだ座学の講義を受けて、日本の現状をよく知って欲しい。長いあいだ、お国のために誠にご苦労様でした」

 空母艦長の訓示のあと、海上自衛隊の灰色の高速艇が、乾いたエンジン音とともにやって来た。老少佐はそれを見て、一歩進み出
「少将。お願いがあるのですが」
「何かな、少佐……」
「我々はこのように歳は取っても、栄光ある帝国海軍潜水艦乗りです。あんなもので楽々と運ばれるのは性に合いません。短艇を用意して頂きたいのです」

 四艘の短艇が、直ちに用意された。
「少佐、大丈夫かね。本当に」
「御心念には及びません」
 少佐は「掛れ」と号令を掛けた。真っ白な海軍服を身に纏った、九〇の老人たちが、忽ち艇に乗り込んだ。

「さあ、上陸だ」
「お前、まず何する?」
「俺はメシ」
「俺は女だ」
「なにーィ。手前ぇ、幾歳のつもりで居やがる」
「おい、静かにせい」
 最後に少佐が乗り込み、笛を銜えて、短く、鋭く吹き鳴らした。それを合図に、四艘の短艇の全ての櫂が、一斉に揃って、垂直に立てられる。
 そして、少佐は敬礼を送った。海将補の艦長が、はっとして答礼を返すと、海自空母の全乗員が、慌しくそれへ倣った。

「櫂備え、両舷前用意」
 空母から充分離れたところで、櫂が水平に降ろされ、やがて
「前へ」
 の号令が掛った。
「それ行けッ」
 老人どもの船が、白波を裂き割って、躍り出た。熾烈な競争が始まった。

「おい、右のやつが前に出るぞ」
「貴様ら、そんなに上陸が嫌なのか」
「遅い、遅い!!」
 艇はすさまじいスピードで、周囲の船を次々と追い抜いていった。海自の高速艇が、彼ら帝国海軍老人の後から追いかけてくる。
 とても、追いつけない。

 横断橋を潜り抜け、前方に、東京の高層ビル群が見えてきた。
「目標を肉眼で確認」
 一人が叫んだ。
「凄い摩天楼だな」
「やはり、日本は神の国だ」
「よし、軍歌始め」
 少佐が命じ、老人どもが唱和した。


 ――轟沈轟沈、凱歌が挙がりゃ
 積もる苦労も苦労にゃならぬ。
 嬉し涙に潜望鏡も、曇る夕日の、曇る夕日の印度洋。


 その声は、勿論もはや空母には届いて来ない。
 それから、数日が経過した。
「いやはや、本当にとんでもない老人どもだったな。航海長」
「ああいう拾い物をするのは、もうこれきりにしたいところですね」
 海将補の艦長は、艦橋の椅子に腰掛けたままコーヒーを啜っていたが、ふと、思い出したようにして
「そういえば、知っているか。その後の、あの伊号のことだ」
「いいえ、私は何も。性能調査のため、試運転をするということでしたが」
「出撃したよ」
「えっ」

「あの老人どもめ、案の定、逃げてなぁ。宿舎から」
「ふむ。それで、伊号はどこへ」
「分からん。どこへともなく、闇に紛れて、消えてしまった」
「そうですか……」
 航海長は艦橋の窓から、遠い太平洋を見て、
「何やら、物悲しいようですな」
「そうでもあるまい」
 艦長はコーヒーカップを受け皿に置いて、椅子から立ち、同じように窓を覗いて
「ただ、船乗りが、奴らの住処へ帰っただけさ」
 と言った。
「俺は、何となく、奴らのことが羨ましい位だよ」

 太平洋の海深く……。
 老人どもの伊号が、今もどこかで――。
 いや、まさかね。