革命国家が勝利に向かって前進する玉川上水のブログ

駿河南海軍工廠の後継。近現代史小説を中心に掲載。

Category :  スポンサー広告
tag : 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Category :  読み切り小説
tag : 

「東京月島・浮き船台十三号」といえば、土地(ところ)の者で知らぬ人間はまず居ない。
 それはそのぐらい巨大で、覆いがたい違和感と、周囲への不和があり、風景の一部となって溶け込むことを、ひたすら拒否しているようだった。誰もが、目を留めた。


[Read More...]
スポンサーサイト
Category :  読み切り小説
tag : 

 昭和十九年。フィリピンを最後の決戦場に選んだ大日本帝国は、ここへ多数の兵力、航空機、艦隊を集結させ、連合軍を迎え撃つ用意を固めた。斉藤中尉の九七式中戦車も、この日、ルソンの密林の中に居た。

 この戦車が「新型」と呼ばれていたのは、もう遠い昔のことであった。取り回しの良い短砲身砲から、高威力の長砲身砲へと、戦車の時代は移り変わっていた。しかし中尉は昔ながらの九七式で、より強力な米国の新型戦車と戦うよりほかに無かった。

「体当たりしてでも、敵戦車と刺し違えてやるのだ!」
 という気概で、四名の乗員は奮い立っていた。間もなく米軍の上陸が始まり、ルソン島の戦線は激戦となった。長距離砲弾が頭上を飛び交う密林の中で、彼は戦車を前進させた。進路を遮る樹木をなぎ倒し、踏み潰すと、舞い上がる木の葉や枝の向こうに、黒々とうずくまっている米軍の戦車が見えた。巨大な砲塔が動き、砲口がこちらを向いた。

「八幡大菩薩! 守らせ給え!」
 彼は神仏に祈り、五七ミリ砲を発射した。すると奇跡が起こった。砲弾は米軍戦車の装甲を貫き、爆発した。敵の戦車は火柱を上げ、吹き飛んだ。
「万歳!」
 乗員たちは快哉を叫び、自分たちが生きていることを暫し喜び合った。そして中尉はこの先の川で、昼食を取ることに決めた。

「この辺でいいだろう」
 しかし彼らは食事を取ることはできなかった。彼らは弁当の包みを開けた途端、握りめしに喰われて、死んでしまった。


Category :  読み切り小説
tag : 

 海上自衛隊の空母「なぐもちゅういち」は、ソマリア沖で旧日本海軍・伊号潜水艦を見つけ、てんやわんやの大騒ぎとなった。
 伊号は昭和二〇年の出撃以来、終戦を知らず、今日までひたすら作戦を続けていたのである。乗員は、みな九〇歳を超えていた。


「敵の哨戒機に発見される恐れがありますから、昼間は潜航をし、充電は専ら夜に行いました」
 今年百五歳になる伊号艦長の老少佐は、綽々とした調子で、これまでの一切の経緯を説明した。空母「なぐもちゅういち」に座乗の海将補は、その説明を聞きながら、俺の親父よりも遥かに元気そうだ、と思っていた。

「うむ……。で、では、糧秣・燃料等は、どうしていたのか?」
 海将補は努めて平静を装いつつ、自分の年齢を二つ合わせたくらい年上の少佐に、訊ねた。

「は。出撃に当たり、軍令部総長から、原住民宣撫用の現金を頂きましたので」
 少佐は紙幣を取り出して海将補の机に置き、
「沿岸の住民と交渉し、確保致しました」
 やはり、見たこともない紙幣だった。

 伊号の乗員は空母に収容され、大宴会が始まった。伊号を曳航する「なぐもちゅういち」に酒は無かったが、老人たちは自衛官が隠し持っていた酒を、どこからか見つけて来て、全て飲んでしまった。大戦中の潜水艦の歌・「轟沈」や、「可愛いスーチャン」などを歌う声が、艦橋にも聞こえて来る。

「艦長、これからどうするんですか。あの年寄りたちを」
「うーむ。航海長、困ったことになったな」
「実に実に、困ったことです」
「医務長が、戦争のことは知らせてはいかん、と言っておった」
「どうしてですか」
「みんな、九〇を越えてる爺さんだ。日本が負けた……などと聞いたら、一体、どうなるか」
「全員、お迎えが来ますかね」
「本艦を乗っ取りかねんよ。ううん」


 連日連夜の宴会のさなかに、艦内放送が入った。
『総員聞け。艦長よりお言葉がある』
「おい、天の声だぜ」
 伊号乗員たちは盃を置き、耳を澄ませた。老少佐もするめいかを齧りながら、スピーカーを見上げる。

『艦長だ。本艦はこれより東京湾へ向かう。途中寄港はしないので、伊号の乗員も同行する。終り』
 ざわめきが起こった。
「おい、東京湾だとよ。内地だよ」
「じゃぁ、任務はどうなったんだ」
「静かにしろ。騒ぐな」
 そこへ、空母の航海長が現れ、声を張り上げて、彼らに言った。
「諸君らが知らんのも無理はないが、すでに米国は無条件降伏をし、大東亜戦争は我が国の勝利に終わったのだ。帝国は今、東亜の盟主としてますます栄えておる。わかったなァ」

「おお」
「終わったのか、戦争が」
「日本が勝ったのか」
「そうかぁ」
「万歳!!」
 またもや、ドンチャン騒ぎが再開した。

「艦長、伝え終わりました」
「ご苦労だった、航海長。どうだった、みんな大喜びだったろう」
「それはもう、九〇の年寄りが、まるで子供のようで」
「何やら、胸が痛むようだな。いずれ、ばれてしまうことだが」
「しかし、もはや戦争のことなど、誰も覚えていません」
「まぁ、な。ところで、航海長、東京湾にはいつ到着する」
「七日後には東京湾です」


 航海長の言う通り、空母「なぐもちゅういち」は、きっかり七日後、太平洋から東京湾へと達した。
 浦賀水道を通る時、飛行甲板にはもう、帝国海軍の水兵服を着た伊号の乗員たちが、鈴なりになっている。
「見ろ。松の木だ」
「良かったな。内地は変わっていないのだな」
「お前はそんなに皺くちゃだがなぁ」

 次に伊号の乗員たちは、艦の正面から、星条旗を掲げたアメリカ海軍の駆逐艦がやって来るのを目撃した。
「おい、アメ公だ」
 みな緊張したが、米駆逐艦は針路を変え、こちらへ敬礼したので
「やはり、戦争は終わったんだな」
「日本の艦のほうが偉いのだ」
 と思った。(本当のところは、海自空母に海将補の旗が揚がっていたからに過ぎない)

 空母は横須賀に到着し、老人たちはそこから小型艇に乗って出発することとなった。
「これより東京に上陸する。帝国海軍軍人として、地方人に迷惑をかけてはいかん。諸君らは特殊な環境下に居たのであるから、暫くのあいだ座学の講義を受けて、日本の現状をよく知って欲しい。長いあいだ、お国のために誠にご苦労様でした」

 空母艦長の訓示のあと、海上自衛隊の灰色の高速艇が、乾いたエンジン音とともにやって来た。老少佐はそれを見て、一歩進み出
「少将。お願いがあるのですが」
「何かな、少佐……」
「我々はこのように歳は取っても、栄光ある帝国海軍潜水艦乗りです。あんなもので楽々と運ばれるのは性に合いません。短艇を用意して頂きたいのです」

 四艘の短艇が、直ちに用意された。
「少佐、大丈夫かね。本当に」
「御心念には及びません」
 少佐は「掛れ」と号令を掛けた。真っ白な海軍服を身に纏った、九〇の老人たちが、忽ち艇に乗り込んだ。

「さあ、上陸だ」
「お前、まず何する?」
「俺はメシ」
「俺は女だ」
「なにーィ。手前ぇ、幾歳のつもりで居やがる」
「おい、静かにせい」
 最後に少佐が乗り込み、笛を銜えて、短く、鋭く吹き鳴らした。それを合図に、四艘の短艇の全ての櫂が、一斉に揃って、垂直に立てられる。
 そして、少佐は敬礼を送った。海将補の艦長が、はっとして答礼を返すと、海自空母の全乗員が、慌しくそれへ倣った。

「櫂備え、両舷前用意」
 空母から充分離れたところで、櫂が水平に降ろされ、やがて
「前へ」
 の号令が掛った。
「それ行けッ」
 老人どもの船が、白波を裂き割って、躍り出た。熾烈な競争が始まった。

「おい、右のやつが前に出るぞ」
「貴様ら、そんなに上陸が嫌なのか」
「遅い、遅い!!」
 艇はすさまじいスピードで、周囲の船を次々と追い抜いていった。海自の高速艇が、彼ら帝国海軍老人の後から追いかけてくる。
 とても、追いつけない。

 横断橋を潜り抜け、前方に、東京の高層ビル群が見えてきた。
「目標を肉眼で確認」
 一人が叫んだ。
「凄い摩天楼だな」
「やはり、日本は神の国だ」
「よし、軍歌始め」
 少佐が命じ、老人どもが唱和した。


 ――轟沈轟沈、凱歌が挙がりゃ
 積もる苦労も苦労にゃならぬ。
 嬉し涙に潜望鏡も、曇る夕日の、曇る夕日の印度洋。


 その声は、勿論もはや空母には届いて来ない。
 それから、数日が経過した。
「いやはや、本当にとんでもない老人どもだったな。航海長」
「ああいう拾い物をするのは、もうこれきりにしたいところですね」
 海将補の艦長は、艦橋の椅子に腰掛けたままコーヒーを啜っていたが、ふと、思い出したようにして
「そういえば、知っているか。その後の、あの伊号のことだ」
「いいえ、私は何も。性能調査のため、試運転をするということでしたが」
「出撃したよ」
「えっ」

「あの老人どもめ、案の定、逃げてなぁ。宿舎から」
「ふむ。それで、伊号はどこへ」
「分からん。どこへともなく、闇に紛れて、消えてしまった」
「そうですか……」
 航海長は艦橋の窓から、遠い太平洋を見て、
「何やら、物悲しいようですな」
「そうでもあるまい」
 艦長はコーヒーカップを受け皿に置いて、椅子から立ち、同じように窓を覗いて
「ただ、船乗りが、奴らの住処へ帰っただけさ」
 と言った。
「俺は、何となく、奴らのことが羨ましい位だよ」

 太平洋の海深く……。
 老人どもの伊号が、今もどこかで――。
 いや、まさかね。





Category :  読み切り小説
tag : 

♪~
 今日は歌を歌い、冷えたワインを飲もう。
 さあ、乾杯をしよう。
 なぜなら別れなければならないから。

 その白い手を握りたい。
 さようなら、愛する人よ。
 さようなら。どうかお元気で。

 我らはイギリスへ行く。
 今こそイギリスを滅ぼそう。
 イギリスへ!


 
 ドイツ週間ニュース




 

 ○月○日。我々海軍報道班待望の日がやって来た。我が大ドイツ海軍が誇るこの巨艦の偉容を見よ。就役なった新鋭航空母艦「グラーフ・ツェッペリン」号は、我が海軍旗を勇ましく翻して、我々班員一同を待っていた。

 今日より我々の乗艦となったこの「ツェッペリン」号は、我が海軍技術の成果たるに相応しい最新鋭艦であるのみならず、我が第三帝国が名実共に、世界に冠たる大海軍国として復活を遂げた証でもある。ここに祖国の再建は成ったのである。今こそ出でん、世界の海へ。我が海軍旗の行くところ、米英の船、全て爆沈せん。

 艦は埠頭より、食糧・弾薬、燃料等、補給品一切の積載を終え、出撃の用意は整った。艦隊司令、艦内放送を通じ、艦長以下全乗員に、我が総統よりの激励文を読み上ぐ。全国民の期待ここに集う。我ら誓って勝たん、総員意気軒昂なり。

 巨艦は曳船に導かれ、いま壮途に付く。行くはロンドン、ニューヨークか。その日は近い。楽隊の見送りに艦長以下、敬礼を持って応う。我が海軍兵、曳船に信号を送り、艦は速力を上げる。舳先を離れ、本艦の白い引き波に揺られる曳船が、豆の如く小さい。



 



 外洋に出たのち、艦は陸上基地より飛来の航空機を収容した。「ツェッペリン」の檣頭に風速風向を示す旗旒信号が上がり、困難な着艦を助ける。猛訓練を重ねた我が飛行隊、事故機は一機もなく、艦はぶじ収容を終えた。荒波を蹴立て、向かう先はどこか。艦長の訓示。

『本艦は現在、アイスランド方面に向け航行中である。目的は該当方面に遊弋中と思われる敵船団の捕捉・撃滅である。途中、敵艦及び敵航空機との接触が予想されるので、充分警戒せよ。終り』

 艦はなおも航行を続けた。しだいに天候が悪化し、海が荒れ始める。突然、艦橋が騒然となった。
「左九〇度敵商船」
「敵商船発見。左九〇度」
「左砲戦、目標敵商船」
「目標敵商船、撃方始め」

 数発の砲声が轟いた。我々班員も急遽カメラを回す。波の谷間に敵商船らしい船影が見え、その周りに水柱が立った。敵船は逃走を図り、艦は速力を上げて追尾する。敵船は降伏した。



 



 俘虜とともに、敵船より拿捕した積荷が積み込まれる。これは敵の缶詰。我々もチョコレートの恩恵に与ることができた。喜色満面の我が海軍兵士たちとともに食べた、牛缶の味が忘れられない。ありがとう、ルーズベルト大統領。


 翌朝、昨日の嵐とは打って変わり、快晴となる。今日は一働き、と出番を待つ飛行兵。俄かに艦橋より警報発令さる。
「敵哨戒機、右三五度」
「対空戦闘用意」

 我が高射砲、砲門を開き、猛然として攻撃す。敵は堪らず遁走、我が視界外へ逃げ去る。ほぼ時を同じくして、友軍陸上機より通報あり。『敵空母見ゆ』。
 我が飛行兵、勇躍愛機の元へ。
「総飛行機発動」
 飛行甲板に並ぶ三〇余機のエンジンに火が入る。艦は増速し、風上へ。航空機を母艦より離艦せしむるため、一定以上の風速が必要なのである。轟々たるエンジン音。多くの乗組員が固唾を呑んで見守っている。艦長下令。
「発艦始め」

 我が精鋭急降下隊、雷撃隊が続々と飛び立ち、そのあとの空いた甲板上に、戦闘機が上げられた。艦長は本艦の所在が敵に知られたことから、敵の空襲の間近いことを悟っていたのである。果たしてその予測は的中した。我が電波探信儀、敵影を探知す。
「電探に感。感二、感二。感三、感三」
「高速接近中」
「敵機。左一三〇度高角六〇度、距離二〇」
「対空戦闘用意」
「対空戦闘用意」
「第五戦速!」

 全艦に警笛と警報が鳴り響き、鉄かぶとをした海軍兵が次々と銃砲に取り付いた。私たちにも鉄かぶとが配られたが、艦長はこれを拒み、軍帽のまま眼鏡を構えて艦橋に立っていた。



 



 遥か後方の空で、時折オレンジ色の火が流星のように落ち、黒煙に変わるのが見えた。果敢なる攻撃を加え、獅子奮迅の我が戦闘機隊。続いて高射砲の猛射。艦は旋回しつつ、敵機に対し激しく反撃する。数機で突入し来る敵雷撃機へ機銃弾を浴びせつつ、急旋回で魚雷を回避。本艦の思わぬ抵抗に算を乱した敵は、悉く逃げ散ったのである。

 敵空母攻撃に向かった我が飛行隊も帰艦を始め、艦は収容作業に追われた。アイスランド沖の海上には早くも日没が訪れようとしている。艦長は他の僚艦と合流すべく、「グラーフ・ツェッペリン」の針路を西へと転じた。夜の北氷洋を単艦、「ツェッペリン」は進む。零時を回り日付が変わった頃、艦橋の将兵に慌しい動きが見えた。夜陰の中に、不明の船影を発見したらしい。

「目標は商船か、目標は商船か」
 艦橋では副長がしきりに敵の正体を問い合わせている。他の指揮所の信号長が応えて、
「軍艦らしい。目標は軍艦らしい」
「艦型識別急げ」
「目標は戦艦、ないしは巡洋艦」
「戦艦なるや、巡洋艦なるや!?」
「目標は戦艦なり」

「前進一杯!」
「前進一杯」
 艦長は即座に命じた。速力指示器が回され、全速の指示が出る。しかし機関の回転が上がらない。先の戦闘の結果、機関に故障が生じたためであった。刻々接近する敵艦。信号長より再び報告。
「先の目標に関する報告は誤り。目標は空母なり」
「イラストリアス型と認む」

 それは昼間の敵空母であった。航空戦で持ち越した勝負を夜戦で付けようと云う腹であろうか。或いは本艦を友軍艦船とでも誤認したるものか。敵空母との距離、今や指呼の間にあり。艦長、下令す。
「取り舵一杯。左砲戦、目標敵空母」
「目標敵空母、左一一〇度距離七・五、速力二五ノット」
「諸元完成」
「撃方始め」



 



 我砲撃開始。我が砲弾ことごとく命中し、左舷の敵空母、忽ち火柱を上ぐ。
「万歳」
 乗員の歓声巻き起こる。敵空母、我に探照燈照射。敵はようやく我が正体を悟り、針路を大きく転じて、しきりと反撃す。着弾の水柱上がる。数発は我に命中。しかし損害なし。
 大小砲は言うに及ばず、機関砲座までが攻撃に加わり、逃げ惑う敵航空母艦。彼我の砲戦、三〇分余に達す。突然、遠方に発砲炎。本艦の周囲に巨大な水柱起る。

「左九〇度、敵戦艦」
「敵戦艦はライオン型と認む」
「右九〇度、僚艦あり」
「僚艦は戦艦『ヒンデンブルク』なり」
「僚艦より信号。敵戦艦を攻撃す」
 戦艦には戦艦を。本艦は任務を友軍戦艦に引継ぎ、戦場海面を離脱したのである。


 夜明けごろ、機関の修理完了。艦は懐かしい母港へと針路を取った。本艦の赫々たる武勲に対し、艦隊司令部よりお祝いの電報が届き、幾日に渡る長い航海・戦闘の疲れも吹き飛んで、喜びに湧く乗員たちとともに、我々班員も心から笑い合ったのである。

 凱旋を祝し、艦長より乗員一同に、一杯のワインが配らる。戦勝を後にしたワインと、クラッカーチーズがこの上なくうまい。懐かしい大地が待っている。帰港だ、帰港だ。「グラーフ・ツェッペリン」は速力を上げる。祖国の土はもうすぐそこだ。



 



 港に停泊する我が商船団の姿が見える。我が「ツェッペリン」号の帰還に向け、僚艦より打ち振られる帽子、旗の波。航海をともにしたこの艦とも別れる時が来た。我々班員は、艦長以下乗員に別れを告げて、艦の今後の健闘を祈りつつ、空母「グラーフ・ツェッペリン」を後にしたのだった。ここに、本作戦記録を終了するものである。



♪~
 たとえ私が遠い海に散ったと聞かされても
 愛する君よ、泣かないでくれ。
 私の熱い血は祖国のために流されたのだよ。

 その白い手を握りたい。
 さようなら、愛する人よ。
 さようなら。どうかお元気で。

 我らはイギリスへ行く。
 今こそイギリスを滅ぼそう。
 イギリスへ!



 



(ENDE)





Category :  読み切り小説
tag : 

 世界大戦は終わりを告げたが、良いことばかりでもなく、新たな問題も生んだ。特に軍用機メーカーに勤める彼は、初めて設計主任をまかされた新型機計画を、一方的に打ち切られ、毎日ふてくされていた。憂さ晴らしに飲み屋へ行くと、同業の連中が沢山たむろしていた。

「みんな聞いてくれ」
 ある時、一人のアメリカ人が立ち上がり、店の中の全員に呼びかけた。
「今度は中東だ。中東で始まるぞ。俺は、P-51D戦闘機とM4シャーマン戦車を出すつもりだ。一緒にやろう。どうだ、やる奴は無いか」

 暫くの間を挟んで、三々五々、グラスを置く人間が現れた。最初に答えたのはイギリス人で、
「そうか分かった。俺も同じことを考えていたんだ。俺はスピットファイアとセンチュリオンを出してやる」
 と言った。ドイツ人も負けじと加わり、
「俺は、メッサーシュミットと四号戦車を出すぞ」
 イタリア人も言った。
「そんなら、俺はMC.205だ」

「黙れ。ふざけるな」
 ソ連人がその騒ぎへ振り返りざま、大声で言った。
「帝国主義者が侵略的蠢動を繰り返すなら、我がソビエトはミグ戦闘機と、T-34/85と、軍事顧問団を送り、愚か者をバラバラに引き裂くであろう。資本主義を滅ぼしてやる」
「なんだと」
 奥で飲んでいた未来人が立ち上がった。
「じゃぁ俺は、F-15と、B-52と、ステルス爆撃機と、トマホーク巡航ミサイルと、ニミッツ級原子力空母を中東へ派遣する」
「ソノヨウナコトハ容認デキナイ」
 宇宙人が言った。
「地球・中東地域ハ、我ガ銀河大帝国ノ、第999999999999987番目ノ殖民地域トナル事ガ、銀河条約ニヨリ決メラレテオル」

「それはあんた方が勝手に決めたことでしょ」
 宇宙道路公団の宇宙バイパス建設責任者が眉をひそめた。
「あの地域へ並列宇宙トンネルを作る計画は、もう600000000000000000年も前に議院を通過していることなんですからね」
「いや、その決議は無効だ。キミ」
 太陽系宇宙ダム建設局長が渋面をつくった。

「どけどけ、どけ」
 そこへ、白ダスキを掛けた一団の青年将校グループが押し入った。
「全員その場を動くな。お前たちは逆賊である」
「何事だ、君らはなんだ」
「だまれ」
 将校は一喝を浴びせ、
「我々維新隊は正義の隊だ。この無秩序から秩序を回復するものだ。全員逮捕する。連れて行け!」

「不届き者。民主主義をなんと心得るか」
「オーマイゴッド。ガッデムジャップ」
「反動野郎、ファシストの右翼」
「銀河大帝国ヲ畏レヌ、野蛮ナル未開土人メ」
 みな、連行された。





上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。