革命国家が勝利に向かって前進する玉川上水のブログ

駿河南海軍工廠の後継。近現代史小説を中心に掲載。

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Category :  小説
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 海軍参謀の大淀少佐は、事務室のデスクで遅めの昼食を取っていた。
 すると、誰か背後から声をかけるものがある。
「それは、現実ですかね?」
 大淀は、物憂そうに振り返る。
 両頬のこけた、青白い顔があった。
 草色のシングルブレザーは大淀と同じ制服だが、彼のはひび割れるように皺が走り、ネクタイも締めていない。
 何も答えずに居ると、彼は大淀の小さな弁当箱を指して、言を重ねた。
「うまそうだ」
 窓の外で、蝉が鳴いている。
「この厚焼き卵のかすかな焦げ目……。しかし、これも虚なのか?」
 呟きながら、男はボリボリ頭を掻いた。抜けた白髪とフケが、大淀のデスクに落ちる。
「頭がおかしいのですか」
 大淀が言うと、男はそれに気付き
「あぁ、」
 詫びた。
「ぼくは、少佐と同じく作戦部の、荒川と申します。ご存知ありませんか」
 聞いたこともない。
「そうですか。まァ、作戦部といっても、広いですからね。ぼくは、毎日サイコロを振って、日を送っているんです」
 図上演習のことだろう。
 そう言われてみれば、図演室の隅に、こんな男が居たような記憶がないでもない。
「ぼくは、皇軍を受け持ったときには、負けたことがないんです。いつも連戦連勝です」
「そうですか」
 大淀は卵焼きをすこしかじって、冷めたお茶を啜った。
「それなのに同僚連中は、聯合艦隊なんてものはもうない、日本は負ける、なんて言うんですよ。もうぼくは、わけがわからなくなった。少佐、一体どっちが現実ですか」
「さぁ、」
 大淀は、弁当に蓋をし、風呂敷の包みを結んだ。
「御自分でお確かめになっては如何ですか」
 荒川は、「おぉ」と感嘆の声を漏らした。
「是非そうします。少佐」
 荒川は戦闘帽を被って敬礼し、踵を返して室を出て行った。
 数日後、三鷹の自宅から出勤する途中の道のりで、彼はグラマンに撃たれて死んだ。


 



テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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