革命国家が勝利に向かって前進する玉川上水のブログ

駿河南海軍工廠の後継。近現代史小説を中心に掲載。

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Category :  橘家の一族
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 あぁ、その話か。あの時のことは私もよく憶えている。
 あれは1988年の夏。今はなき我が共和国が、米帝の傀儡――当時共和国では「南」の国名を口にすることを法律で禁じていた――に対して、最後の総反撃戦争を企図し、準備を進めていた頃だった。……そう、いわゆる第四次奥羽越戦争のことだ。
 当時私は、武力省平和統一部で人民軍大尉として働いていた。年齢は、そうだな、まぁ二十四くらいだったかな。
 平和統一部というのは、お前たちの国で言えば情報軍のようなもので、部扱いだが我々の能力は貴様らの国の情報軍を遥かに凌駕して――
 なに、若すぎる?
 馬鹿者。私がそれだけ有能な人民軍士官だったという証明だろうが。
 ……貴様もしつこい男だな。
 あぁ、うるさい。私の思い違いだ。確かに貴様の言うとおり、私は二十八だった。これで満足か。
 話を続けるぞ。
 当時、米帝の傀儡は――すまない、まだ昔の癖が抜けなくてな。兎に角当時の「南」は、80年代後半のバブル景気に湧き立ち、その国力、特に経済力を飛躍的に伸ばしていた。
 だが我が共和国はといえば、率直なところ、「南」の繁栄とは反比例して、国力は日々衰微していく一方だった。
 これは私がいちいち説明せずとも、公に広く知られていることではあるのだが、我が共和国は、「南」と米て……アメリカがそうであるように、共産圏の総本山であるソ同盟と、軍事・政治・経済、あらゆる面で密接な関係を持ち、その影響を強く受けていた。
 ところがその要石のソ同盟で腐敗が進行した結果、ソ同盟は諸国を糾合する力を失い、共産圏全体が落ち目になっていったわけだ。そうして、それは共和国でも例外ではなかった。
 当然だが、平泉の人民戦線指導部は焦った。「このままでは共和国はジリ貧だ」とな。
 結局それは杞憂であり、誇大妄想でしかなかったが、少なくとも連中は、「南」の爆発的経済成長が永久に続くと思っていたのだ。
 しかし共和国はといえば、話した通りの有様で、国内、特に農村の惨状は凄まじいものがあった。
 樺太、エトロフなどは殆ど無政府状態に近く、管理不能になったから、ソ同盟に与えてしまえという話も出た。後年、実際その通りになったがな。
 南北の格差は広がる一方で、このまま十年もすれば、共和国は「南」に永久に追いつけないどころか、連中が北進して、一方的に叩きのめされるに違いない、という考えが、当時の指導部で大勢となっていた。
 誰も何も言わないうちに、軍は開戦のためのあらゆる準備を進めていった。
 陸軍では百万人が新たに動員されたし、海軍の機動部隊も千島の沖で毎日のように実弾を撃った。
 お前たちはあの開戦のことを晴天の霹靂だったと言うが、あれだけ大掛かりな戦争準備をしていたのに、本当に何も思わなかったのか?
 ……なんだと?
 たわごとをぬかすな! 共和国でも「南」と同じように、その『バブル』とやらの恩恵を受けていたとしたら、そもそも我々はあのような挙に出はしなかった!
 そのような世迷言を二度と口にすれば許さんぞ。
 まぁ、いい。当時の共和国の秘密主義は、常軌を逸したところも多々あったからな……。
 兎に角当時「南」で起きていたことと反対のことが、共和国で起きていた、と考えれば理解が早かろう。
 そのひとつが、我々平和統一部国内課が行ったスパイ狩りだ。
 開戦に備え、「南」の浸透分子を徹底的に排除する命令が下され、予算も普通時の倍、計上された。
 だから貴様の言うとおり、大規模な防諜作戦が当時行われたのは確かだ。
 しかし貴様には悪いが、そのことは貴様たちが言う杉沢村事件とは、まったく関係ないことだ。
 あれは、陸軍が山中の村落を舞台にした実弾演習場を欲したため、政府が青森県令に命じて徴発したものだ。
 つまり、あれは最初から事件でもなんでもない。
 ただ、その中に「南」のスパイが居て、そいつが逃げたので、我々が山狩りを行って射殺しただけだ。
 村民を全員……などという話は、おおかた「南」の情報軍あたりが流した謀略宣伝だろう。
 実にくだらぬ。
 当然、他の村民は全員別の土地へ移したし、今も生きているだろう。
 もっとも、共和国は崩壊の時、戸籍も含めあらゆる公文書を焼却してしまったから、実際に会うことは難しいかもしれんがな。
 事件の話を聞いたとき、我々はそれを一笑に付した。あまりにも事実無根のことだったからだ。
 共和国人民軍は、その建軍以来、常に武士たるよう求められて来た軍隊だ。
 怯懦、卑劣を憎み、己を律すること厳しく、清廉潔白を高しとする武士となるよう、私も、そして皆も、厳格な教育を受けた。
 だから、私には信じられなかった。
 我が軍が東京に水爆を落としたと聞かされた時には――。

 週刊「スパイ」別冊「北日本諜報機関・おそるべき秘密国家の全貌3―党が英断すれば我らはやる」(1992年刊)より、元人民軍少佐・橘楓(平和統一部国内課)の回想



 




テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

御婦人の年齢を話題にしては不可ないのだが
ってことは橘少佐はワタシと同年同期w
当時ワタシも頻繁にバイクで白河の国境を越えて「北」に侵入しておりましたから,どこかで御一緒しておるかも知れませんな.機会があれば一席を共にしたかったものだ.

……言葉が通じるかどうかが問題だが.
2007/08/28 20:37URL  「い」 #6y6JeEAQ[ 編集]

姉さんは歳取りませんよ(なんだそれ)
>言葉が通じるかどうかが問題

このインタビューからも、楓の言葉が相当訛っているのが分かりますねぇ。
楓の方言が必要以上に居丈高に感じたので、尊大な口調にして編集したんでしょうなw
2007/08/29 11:16URL  早池峰山 #w1X/gZh6[ 編集]

飛龍瑞鶴
1988年か、私が生まれた年ですね…
しかし、この世界だと私が生まれる可能性は微妙です
2007/08/29 14:13URL  業者 #bUOqhcfc[ 編集]


うぁ、名前欄間違えた
2007/08/29 14:14URL  飛龍瑞鶴 #bUOqhcfc[ 編集]


飛龍さんは核爆発くらいでどうにかなるタマじゃないでしょw
2007/08/29 20:24URL  早池峰山 #w1X/gZh6[ 編集]


流石に核は…邪神の眷属たる私でもムリかなと思います
2007/08/30 13:18URL  飛龍瑞鶴 #bUOqhcfc[ 編集]

おいお前らちゃんと読め
橘少佐は「東京に水爆を落とした」と言ってはいますが「爆発した」とは一言も言っておりません.だいたい真夏の南の季節風が吹く時期,東京に水爆を落としたら,当時,平和統一部會津鎮台に勤務していた橘少佐はフォールアウトで生きていられる筈がありません.

当時の北日本の共和国中央通信によれば「新型爆弾投下実験は成功裏に実施された」と報じています.この場合の「成功裏に実施された」というのは,北がよく使う言い回しです.その意味するところは言うまでもありませんw

2007/08/30 14:55URL  「い」 #6y6JeEAQ[ 編集]

そういう話でもいいなぁw
楓「いやぁ、実に驚いた。なにしろ信管を抜いた水爆を、敵の国会議事堂の真ん中に直撃させたというのだからなぁ」
記者「え、信管は抜いてあったんですか? 不発ではなく?」
楓「バカモン、好況の分け前をこちらにも寄越せという脅しに決まっているだろうが。だいたい東京を灰にしたら、統一後にどれだけの復興費用がかかると思う」
記者「いや、でもやっぱりただの不発だったんじゃ」
楓「うるさいな。私は気が短いぞ」
2007/08/30 15:18URL  早池峰山 #w1X/gZh6[ 編集]

じゃぁカッコ良く続けるとw
司「インタビュー,ご苦労様でした」
楓「全くだ.臭い芝居をさせおって.貴様ら “南” のやりかたは今でも慣れん」
司「あのとき,函館で待機していたTu-22Mに搭載した水爆の信管を,私たちが用意したダミーに」
楓「…“オペレーション・トロイ” か.あれをすり替えるのは我々にも危険な任務だった.結局,私の部下は一人も還らなかった.今でも全員の顔は覚えている」
司「そして“南” の私たちは,私たちの政府首脳に『これは“北” の警告だ』と信じさせ」
楓「我々は,書記長以下の幹部に『攻撃は失敗した』と思い込ませた」
司「最後の攻撃が失敗したと解った後,共和国政権の崩壊は急激でしたね」
楓「言うな! 私とて愛国心はある.母国が滅びて嬉しいと思うか」

ーーー

司「“オペレーション・トロイ” が失敗するとは考えませんでしたか?」
楓「私は,私の部下たちを信頼している.でなければ真っ先にフォールアウトが降って来る白河国境まで前進して来たりはしない」
2007/08/30 16:43URL  「い」 #6y6JeEAQ[ 編集]

映画化決定
なんだか、フクイ先生が好きそうな話になって来たw
2007/08/30 17:22URL  早池峰山 #w1X/gZh6[ 編集]


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*ようこそ、トラブルシューター。*

Computer:
 このコメントフォームに「/」を重ねて書くことは反逆です。
 URL欄にアドレスを入れる者は、恐らく反逆者以外にはいません。

 市民の幸福は、コメントを書き、Computer に奉仕することです。
 あなたはComputer の仕事に感謝して、喜んでコメントを書きますね?
 そうしないことは反逆です! 直ちに処刑の対象になります!!
 
















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