革命国家が勝利に向かって前進する玉川上水のブログ

駿河南海軍工廠の後継。近現代史小説を中心に掲載。

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 新宿駅
(PM.14:30)

 日本最大規模のターミナル駅である新宿駅は、その日も膨大な乗降客で賑わっていた。背広姿の会社員は当然として、お盆で帰省する者や、旅行鞄を背にしている者もある。
 黒山の人だかりが出来ているプラットホームに、ようやく汽車が入ってきた。人々が地面に置いていた手荷物を取り上げ始める……。と、そのとき構内放送がスピーカーから流れた。
『駅長より、小田急小田原線をご利用のお客様にお知らせ致します。誠に申し訳ございませんが、十四時三十五分発・小田原行の普通列車は、事情により、徴発車両となります』
 反転フラップ式の発車案内板がパタパタ切り替わり、発車時刻の横に書かれていた「普通」の白い文字が、「徴発」という赤い文字に切り替わる。列車のほうも同様。
『一般のお客様は、ご乗車になれません。次の十五時三十分発の列車をお待ち下さるよう、お願い申し上げます。悪しからずご了承下さい』
「ふざけんな!」
 スピーカーに向けて、男が怒鳴った。運悪く近くに居た駅員が捕まる。
「やい! 一時間以上も待たせておいてこれか! どうなっているんだ」
「俺に訊いたって、知るもんか」
 駅員は掴まれた腕を振り払い、そっぽを向いた。男が何か言いかけたとき、小銃を担いだ兵隊の群が、駆け足で階段を昇って現れた。帽章から、それが海軍の兵隊だと知れる。
 古参らしい一人が先頭に出、笛を長く吹いた。
「全員乗車! 急げ!」
 同時に、ドシンという連結音が構内に響く。三連装機銃を装備した対空車両が、列車の前後に連結したのである。
 兵隊は後から後から、次々にやって来る。弾薬箱、迫撃砲などの装備が次々に積み込まれ、数人で機関銃を運んでいる組もある。
 ――よく分からないが、何かとんでもないことが起こったらしい。
 男と駅員は互いに顔を見合わせて、ホームの隅にひっそりと引き下がった。
「あのう、海軍さん」
 一方、一人の背広服姿の男が、恐る恐る前に進み出て、軍刀を佩びた長身の士官に声をかけている。
「なにやら物騒ですが、何があったんですか」
 するとその士官は、
「余計なことを訊くな!」
 男はビンタを見舞われ、ホームを転がった。


 その頃、基地防衛のためバリケードを築き、布陣していた厚木基地警備隊の将兵は、遠くから徐々に近付いてくる戦車の走行音に気付いた。
 とうとう敵の本土上陸軍が迫ってきたのだ、とみな思った。
「弾込めーッ!」
 軍刀を抜き払って命じたのは、航空参謀の菅野直少佐である。元は海軍でも一位二位を争う勇猛豪胆な戦闘機パイロットで、その粗雑な性格から、何度も事故を起こし、機材を壊しまくったことから、デストロイヤーというあだ名がある。
 守備兵たちは、ガチャガチャと九九式小銃を操作し、弾を込めて遊底を引いた。各所に多数配備されている九二式重機関銃も、筒先を接近してくる車列に向ける。
「くそ、アメ公め! 本当に我が軍の軍服を着てやがる。汚いやつらですな、参謀長」
「ま、まぁな」
 近江は嫌な汗を背中に感じながら、その車列を見ている。服どころではない。戦車も、トラックも、武器も、そして人間も、日本製であると思われた。
 ――冗談じゃないよ、どう見ても本物じゃないか。
 数少ない陸軍の自動車部隊である。横浜駐屯の部隊だろうか。
「参謀長! あのような卑劣漢は、何としても撃滅せねばなりません!」
「あ、あぁ。そうだね菅野君。では、私は指令所で長官をお守りしなければならないから、これで」
 近江は略帽を被り直して言った。一刻も早く小園長官を正気に戻さないと、本当に大変なことになる。
「了解です! 猫の子一匹といえどもここは通しません。この菅野にお任せを!」
 近江が踵を返して歩き始めると、鎮圧部隊のトラックに搭載されたスピーカーから声が聞こえた。
『叛乱部隊将兵に告ぐ。我々は帝国陸軍東部軍第四機動歩兵中隊だ! 首謀者以外の者の罪は問わないから、直ちに武装を解き、恭順しろ! さもなくば逆賊の汚名を蒙るぞ』
「うるさい、くたばれ!」
 菅野は射撃命令の代わりに、自ら擲弾筒を放った。トラックが爆風で吹き飛び、燃えながら転げ出てきた敵兵に向けて、機関銃が唸りを上げる。小銃も撃ち始め、激しい銃撃戦となった。
 菅野の頭の横を、ツゥーっと弾が飛んでいく。菅野は周囲の兵隊の武器をかわるがわる使いながら、英雄的に抵抗した。
 敵兵はトラックを降りたものの、こちらの機関銃のためにまったく身動きが取れない。弾着のたびに土煙が上がり、あたりには硝煙の匂いが濃厚にたちこめ、黒い煤が風に乗って舞っている。
 その薄靄を払って、戦車が姿を見せた。未舗装の道路の上を、ガタガタと音を立てて走ってくる。
「少佐、戦車だ。五式中戦車改だ。バリケードを破る気ですぜ」
 機関銃の下士官が叫んだ。十年前の戦車だが、主砲を88ミリ砲に換装した新型である。
「慌てるんじゃない。もし奴が大砲を撃つようなら、伏せろ」
 しかし五式中戦車改は発砲のため停止するような気配は見せず、基地の正面ゲートに向かって、そのまま真っ直ぐ突っ込んできた。
 戦車の車体が菅野の眼前にいよいよ迫る。一人の兵士が思わず腰を浮かせかけた。その兵士の頭を菅野は押さえつけ、「待て!」と一喝する。
 その直後。五式中戦車改は、予め菅野たちが掘ってカモフラージュしておいた対戦車壕の中に、轟音を立てて沈み込んだ。戦車は身動きが取れなくなり、立ち往生する。
「よし今だ。お前たち、俺に続いて来い!」
 菅野は隣の兵隊から素早く小銃を奪うと、それに着剣し、言うなり擱座した戦車に向かって、飛び込んで行った。
 やがて戦車のハッチが開き、乗員が慌てて中から飛び出てくる。
「手を挙げろ、アメ公!」
 菅野はその戦車兵たちに銃剣を突きつけ、忽ち全員を捕虜にしてしまった。



 




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*ようこそ、トラブルシューター。*

Computer:
 このコメントフォームに「/」を重ねて書くことは反逆です。
 URL欄にアドレスを入れる者は、恐らく反逆者以外にはいません。

 市民の幸福は、コメントを書き、Computer に奉仕することです。
 あなたはComputer の仕事に感謝して、喜んでコメントを書きますね?
 そうしないことは反逆です! 直ちに処刑の対象になります!!
 
















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