革命国家が勝利に向かって前進する玉川上水のブログ

駿河南海軍工廠の後継。近現代史小説を中心に掲載。

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Category :  小説
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 彼は俄かに語りだした。――昔の話です。
 まだ私がほんの幼い子供だった時期だから、何十年と前になる。
 今にして思えば他愛もないことだけど、あの頃の私には、空中にぷかぷか浮かぶ、自分の生首が見えていました。
 もっとも見えているからといって、生首は、特に何をするでもない。
 ただ空中に浮いている。
 そうして、だまって私を見つめているんです。
 それは確かに生首ではあるけど、その両の目は瑞々しく光を宿していて、だから幽霊という感じはしなかったね。
 おまけに頬の血色もいい。
 ただそこから下だけが、描き忘れられたように、存在しないわけ。 
 私が彼を見ると、彼はその双眸でもって、真っ直ぐ私を見つめ返して来る。
 眼前で指を動かせば、反応を示した。
 おぞましい話と思うかもしれないが、私は怖いと思ったことはない。
 むしろ、彼が見えないときのほうが私にはおそろしかった。
 振り返ると、そこに何か立っているんじゃないか、って思うときがあるでしょう?
 そんなとき、またあの生首が、ふわりふわり、浮遊しているのじゃないか――。
 そういうふうに想像するだけで、息が詰まった。
 あんなもの、実際に見ているあいだは、怖くもなんともないんですがね。
 ただ自分の生首が、なぜこんなところでぷかぷか浮いているんだろう、と考えると、不思議な感じがするというだけ。
 子供の時分ってのは、随分とまぁ、長い時間を過ごしたような気がするもんです。
 だから、私が私の生首と過ごした時間も、私にはえらい長いものに感じますが、客観的には、数年に満たないんでしょうな。
 生首のやつ、ある日ぱったり姿を見せなくなって、奴ともそれきりですよ。
 あれが果たして幻であったのかどうか……。なにしろ昔の話ですから、虚実どちらとも判断つきかねますなぁ。
 ――何も、そこまでおそろしがることはないじゃないですか。
 大丈夫ですよ、作り話なんですから。
 だからこの話は、全部嘘です。



 




テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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