革命国家が勝利に向かって前進する玉川上水のブログ

駿河南海軍工廠の後継。近現代史小説を中心に掲載。

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 原稿をほったらかして何をしておったのかというと、横浜は中区にあります日本郵船歴史博物館で開催の特別展・「船をとりまくアール・デコ」に行って参りました。
 ので、今日はそのお話をしたいと思います。
 1930年代の話です。
 その頃、欧米航路・北米航路の旅客事業拡大に乗り出していた日本郵船にとっては、まず何を置いても欧米列強国(特に英米)に負けぬ設備と様式美を備えた「豪華客船」が必要でした。

 軍事に造詣の深い方々にはきっと、空母「冲鷹」「雲鷹」「大鷹」の名の方が馴染み深いかと思われますが、軍艦に改造される以前には、それら三隻はみな、いずれも劣らぬ最新鋭豪華客船でありまして、日本郵船が社運と矜持にかけて建造致しましたる夢のフネであり、戦前には大海を狭しと押し渡り
「いざニューヨーク。いざロンドン」
 と云う、まことにもって気宇壮大なる娘どもでございました。わが『光輝有ル帝国海軍海上部隊』と雖も、その躍進海面は精々ホノルル・パールハーバー程度であることを考えると、高々一万数千トンの彼女らが、生まれながらに背負いたる使命の大きさの程も知れようというもの。

 所詮「近海決戦」しか能がない田舎娘連中とはそのへん格が違うのですが、そういう田舎娘ばかりをせっせと集めていた帝国海軍ですから、郵船が敏腕デザイナーに筆を取らせ
「欧米に負けじ、世界に負けじ」
 と着飾らせた絢爛豪華・豪壮な「アール・デコ」様式の装飾の数々も、取り敢えずブチ壊して格納庫にしてしまいました。郵船の人たちは泣いたと思いますが国のためですから仕方ありません。
(しかも空母にされた後の三隻ってのが、これが又見る影もなく不細工なアレですから、これで戦争に負けた日には、「死ね。氏ねじゃなく死ね」くらいのことは言われても仕方がないでしょうね。因果なことするぜ帝国海軍サンは)

 実際、郵船歴史博物館の昭和初期戦前から敗戦までの期間を展示したコーナーは、そういう「因果なことした」帝国海軍に対する非難・悪口・恨みぶしに満ちています。
 戦争中、日本郵船は185隻もの商船を海に沈められ、5312人もの人間が故人となりました。これで「一企業」が受けた損害なのですから、それが如何に壊滅的な意味を持つものであるか、そして戦前、この企業が如何に大きな存在だったかが窺えます。

 みやげ物を売っているミュージアムショップでは、1/700ウォーターラインシリーズの「新田丸」(冲鷹)「八幡丸」(雲鷹)「春日丸」(大鷹)が売られていますが、改装後の航空母艦姿のキットは売っていませんでした(「隼鷹」=「橿原丸」も無し)。

 空母時代は所属も帝国海軍に移って、豪華でも客船でもなくなってしまったワケですから、売ってないのも当然と言えば言えますが、それでもれっきとしたNYK三姉妹(それぞれの頭文字を取って、郵船の宣伝ではこう呼んでいたそうです)のはず。しかし、売っていません。他の書籍等にも空母の「く」の字もなし。

 大事なフネを取られ、海員を虫のように殺されたあげく、戦争に負ければ国家は掌を返して、一円の補償もしてくれない。
『フネとヒト』というテーマでやってきた私には、
「帝国海軍とはなんぞや」ということを考えさせられる博物館でした。


 


・で、結局:
「飛びます」次回は六月十三日(日)に放送します。
 いつもとお時間が異なりますので録画にはご注意ください。

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